2012年5月21日月曜日

井田病院のがんサロン

がんサロン、といえば、
「がん患者や家族などの方々が病院の会議室や保健センターなどに集まって、お互いの療養体験を語り合ったり、がん医療の最新情報などを学習したりする場」
であるが、がん診療拠点病院では、この「がんサロン」の設置が推奨されている(義務ではない)。

平成18年に拠点病院となった井田病院でも、いち早く、がんサロンの設置をしたのだが・・・
「場所がわかりにくい」「いつやっているのかわからない」
などなどの理由で、年間10名前後の参加者しか得られず(月に2回もやっていたのですよ!)、
その目的からはほど遠いものになっていた。

さて、このたび緩和ケアチームも私とがん看護専門看護師のTさんが来てくれたことで(実はTさんは、川崎市初の専門看護師なんだそう!)、新たにスタートしたことを機に、
「がん相談支援室」の新規設置と、「がんサロン」の立て直しを仕事として取り組むこととした。

「がん相談支援室」についてはまた別の機会に書くとして、
がんサロンについては、とにかく人を集められる、そして来た人に「また来たい」「役に立った」と思ってもらえるものにしないとならない。
そのためには「どこでやっているかわからない」ような場所でやってはいけない。

最初は、すごく狭い部屋や、病棟の細い廊下の先の部屋なども提示されたが、
「最上階」「エレベーター下りて目の前」という好立地に「展望ラウンジ」なる普段使わない空間があったため、そこを何とか!とお願いしたところ、幹部の先生方のご尽力により、使わせてもらうことが可能に!
いや~嬉しい!



あとは内容だ。
単に「お話ししに集まりましょう」と言っても、中々集まりにくいだろうから、イベントも組み合わせていくのも良いかもしれない。
これからみんなで考えて、新しいものをつくっていく。
すべては患者さんと家族のために!

緩和ケア専門医に求められるもの?

先日、緩和ケアの先生方数名と話す機会があったとき、
「これからの緩和ケア医には何が求められるか」
という話になった。

ある先生は
「化学療法による副作用対策も対応しないとならないのか」
と言い、またある先生は
「心不全などの末期状態の管理も任されることがある」
と。
まとめて言えば「終末期に向かおうとしている方の全ての状態に対応できることが求められている」
で、それはつまり「スーパーマン」を求めていると言うことで、理想を追求すればきりがないと言うことだ。

確かに、心不全やCOPDの緩和についても対応したほうが良いこともあるし、
がんに至っては「診断時から」関わることが求められるようになってきている以上、化学療法などの支持療法も、病院によっては受け持たなければならないだろう。
しかし、実際の研修は、それを充足するだけのものにはなっていない。
例えば、当院でも(もちろん緩和学会の認定教育施設であるが)、化学療法の支持療法については緩和ケアチームについて研修しない限り、触れる機会はないし、それは必修とはしていない。
非がんの緩和については当院では学ぶことはできるが、それが困難な施設もあるだろう。
しかし、それも全て「認定教育施設」である。

どのような緩和医を育てていくか、という議論が、現状に追いついていない、ということかもしれない。
それはつまり、緩和ケアの業界も徐々に成熟してきていることの現れなのかもしれないが。
数年前までは、とにかく緩和ケアという概念、緩和ケアを扱える医師を、増やし広めていく、ということが最大のテーマだったと思われるため、それでも良かったのだろうが、
現在では「いつでもどこでも」「早期から」「疾患を問わず」というところが求められ、緩和の専門性は高めつつ、よりジェネラルに対応できる能力も求められているような気がする
もちろん、施設によって「うちは支持療法は腫瘍内科医がやってくれるから」とか、違いはあるだろうが、研修医・若手医師は永遠にその施設で働くわけでもないだろうから、ある程度どの施設に行っても緩和医として働けるような研修を受ける必要がある。
しかし、そのためにはどのような研修体制を整えるべきか、という議論はまだあまりされていないように思う。

そんな事を言っていると、ある先生から
「若手の多くは、まだまだ『口をあけて待っているヒナ』状態なんじゃないの?」
と言われ、それもちょっとショックであった(まあ、自分もそういう節がないわけでもない)。

自分も含め、ヒナ鳥の目を開ける仕事を、これからやっていかないとならない・・・。

2012年5月9日水曜日

コンサルタントの難しさとやりがい

緩和ケアチーム(当院では「がんサポートチーム」)とは、呼吸器科、外科、泌尿器科・・・など、がん診療に携わっている科のがん患者さんに、緩和ケアを提供するチームである。
自分が主治医になるわけではないので、最終的に診療の責任を負うわけではないが、主科の先生ががん診療に集中できるよう、サポートしていくのが仕事である。
仕事の内容は多岐にわたり、疼痛や吐き気などのコントロールから精神的ケア、抗がん剤の副作用対策、緩和ケア病棟や在宅部門との橋渡し・・・などなどである。

このようなコンサルト業務をはじめて1ヶ月近くたち、仕事もようやく軌道に乗ってきたが、意外と難しいのが「自分が主治医では無い」ということからくる診療のしにくさである。

つまり、業務の対象となるのが「患者さん(と家族)」だけではなく「主治医」でもあるため、そのバランスを取らなければならないということである。
多くの患者さんは主科の治療方針があるため、その治療方針を阻害するような方針はたてられない、ということである。
慎重になりすぎて、時間をかけることもできないし、
一方で、性急にやりすぎては患者さんに問題が起こるかもしれない。
また、緩和ケアで使う薬は副作用のある薬もいくつかあるが、
薬の副作用が出て、それが遷延すれば、治療方針が台無しになることもある。
かといって、副作用のリスクがあっても症状緩和のためにどうしてもその薬を使いたいときもあり、自分が主治医で診療しているとき以上に神経を使う。
しかも、緩和ケアはいつでも100%の結果が出せるとは限らないため、常に、自分の診療を毎日他者(しかも大抵は自分よりも年長のDr)に評価され続ける、というプレッシャーもある。

しかし、担当患者数が増えてくると、自分たちチームが院内で信頼されている気にもなり、やりがいがあるのも事実である。
患者さんが良くなって、笑顔になるときのうれしさは変わらない。
そして何より、自分がやりたいと思っている「早期からの緩和ケア」に関われるのが楽しい。
Advanced Care Planningも限られた患者さんだが少しずつはじめようと考えている。

患者さんの中には、私たち緩和ケアチームの存在を知らない患者さんもいるし、
DrやNsの中にもいまだに「緩和ケアは末期になってから紹介するもの」と考えている方もいる。
そのため「こんなチームからケアを受けられると知っていれば、もっと早く紹介してもらったのに・・・」という声を患者さんやご家族から頂くこともある。
これからも患者さん、ご家族、そしてスタッフのために、緩和チームの実態を宣伝し、緩和チームは診断時などの早期から関わっていくべきことを知って頂き、チームが関わるといいことがある、と信頼して頂けるように実績を積み重ねていく必要がある。