2011年5月27日金曜日

免疫療法について

先ほどツイッターでツイートした内容をブログにまとめてみる。

【免疫療法1】地元紙に免疫療法の特集が載ったことから、外来で一大免疫療法ブームが起きていることに対して。私は個人的には免疫療法を否定するものではないが、ちょっとしたお祭り騒ぎに、冷静になって考えてみる。
【免疫療法2】まず免疫療法の効果だが、とある免疫療法クリニックのデータでは胃癌での奏効率10%、膵癌で12%くらい。日本での胃癌標準治療であるS1/CDDPで奏効率40%前後、膵癌のGEMは10%程度。
【免疫療法3】免疫療法は雑多な患者群なので、一概に結果を比べられないが、奏効率においては抗がん剤を超える効果があるとは言えなそう。少なくとも万人に効く「夢の治療」とは言い難い。奏効率だけでの比較ももちろんできないが、生存期間についてはデータもないので比較もできない。
【免疫療法4】それでも前述のクリニックはデータを出してるだけまだ良心的で、他のクリニックでは診療実績のデータはあっても効果についてのデータもない。「年間5000人の診療実績!」と広告しておきながら、そのうち効果が出ているのは何人、と広告しないのはいかがなものか、と。
【免疫療法5】そのようなクリニックの特徴は、特に効いた症例のみを「症例報告」として提示していること。症例報告レベルであれば、抗がん剤でも全身の転移が全て消えた例もあるし、進行膵癌に対してGEMとS1で8年近く治療を続けている症例だってある
【免疫療法6】効いた症例もある、という点は否定しないが、それが「年間5000人の診療実績」のうち何人に期待できるのか。また、その中には抗がん剤との併用例も含まれるはずだが、それは抗がん剤が効いているのであって免疫療法は意味なし、という例はないのか。月に150~200万円もかかるのにだ。
【免疫療法7】あと、抗がん剤の入っていない初回治療の方と、1st lineが終わった方、2nd lineが終わった方、それぞれで効果の違いはないのか。それを示さないと、患者さんがそれぞれの段階で「抗がん剤を続けるか、免疫療法か」を選ぶことが本当はできないはず。「夢のような治療」を匂わせて誘導するのは良心的とは言えないのでは。
【免疫療法8】抗がん剤との併用、というのも問題は多い。仮に、免疫療法が効果があって、抗がん剤は無効の場合、癌は小さくなるのでどちらの治療も続けられるが、実際には抗がん剤は体に毒なだけで意味がない、ということになるし、逆であればお金の無駄になる。
【免疫療法9】また免疫療法は副作用少ないことが売りだが、まれにアレルギー反応が起こる、と記載がある。抗がん剤でもアレルギーが起きることはあるから、併用の場合、どちらの副作用か判別しかねる。結果、実際には悪者ではない抗がん剤を止めざるを得なくなり、結果的に余命が短くなる例も想定される。
【免疫療法11】免疫療法中に仮に状態が悪化しても、自施設では対応しない、というのも問題点のひとつ。クリニックである以上、紹介元の病院とは密に連携を取り、万が一の時の対応方法や経過報告などを行うべきであると思うが、今のところそのような施設に出会ったことはない。急変時に手紙ひとつで送り返してくるだけである(しまいには「地元での療養を患者自身がご希望された」とか書いてくる)。
【免疫療法12】免疫療法は今後に期待できる治療法かもしれない。だが現在はまだ研究段階に過ぎない、としか言えないと思う。私は上記のように説明し、それでも免疫療法を希望される場合はもちろんご紹介するし、仮に急変した場合はこちらで診ないとならないとは思っている。ただ、本当に患者のことを思うのであれば、データの科学的分析と中立的な情報提供、患者の人生を考えたプランニングと療養環境の整備、なども考慮に入れてもらいたいものである。
【免疫療法13】患者さんも、広告にあるような「劇的に効いた症例」のみに目を奪われず、色々な専門家の意見を聞いて冷静に判断して頂きたい。「劇的に効いた症例」なら抗がん剤治療でもある。ただ、我々はクリニックのように派手に宣伝をしていないだけである。

よく勘違いされることだが、私たち医師はいくら高い薬を売っても、全く儲からない。薬屋さんが儲かるだけで、場合によっては高い薬を出す方が病院の赤字になることもある。なので、劇的に効いた症例のみを患者さんに向かってアピールする意味はないし、中立的な考えでアドバイスもできる。