2014年6月22日日曜日

2014年緩和医療学会・神戸

今年も、緩和医療学会が終了。
8000人以上が参加する巨大な学会。バカボンパパの「これでいいのだ」をテーマに過去最高の人数を集めることとなった。 

 
今年初めての取り組みとして「組織委員会」なるものを作ったことがある。
昨年までは、大会運営に関わる少数の委員が、全てのセッションを決めていたので、ある特定領域の演題が多くなったり、偏りが出たり、という問題が指摘され、今回は大会で取り上げた方がいい領域を6つに分けて、各領域で積極的に関わっているメンバーを全国から集め、委員会が組織された。ちなみに私は第6グループ「教育・研究・啓発」領域であった。

その組織変更の効果か、今回の学会は例年以上に盛り上がり、各セッションも飽きないものが多かったように思う。手前味噌ではあるものの。

忘れないうちに、私が参加したセッションについて振り返ってみたいと思う。 

 
・輸血についてのpros&cons 
pros&consとは、賛成反対、の意味だが、要は正解が出しにくいテーマについて賛成と反対両方に分かれてディベートを行うというもの。今回のテーマは「輸血」で、胃がんで吐血して入院した、予後が短くなっている患者さんに対し、輸血をするか?しないか?という趣旨だ。私は「しない派」、「する派」は聖隷浜松病院の森先生が務めた。私が臨床倫理の4分割法、森先生はエビデンスを駆使したプレゼンをしたのち、志真先生を患者役としてのロールプレイ。これも、この学会初めての仕掛け。かなり広い会場で500人からの聴衆を前に、リハーサルなし・台本なしのロールプレイをするのはかなりストレス…。その後に、フロアとのディスカッションだったが、若干「する派」が多かったかな?という印象。印象的だった意見としては、数名の医師から「患者さんの意見を十分に入れて、選んでもらうべきでは」というご意見を頂いたこと。私のロールプレイがややパターナリスティックだったためだろうが、まああれは戦略。「インフォームドコンセントで、患者さんや家族に全てを選んでもらうことは時として残酷であり、場合によっては先を見通せるプロとしての医師がリードした意思決定もあると思うよ」というメッセージをあえて伝えるため。その一方で森先生がきちんと、患者さんのご希望などを引き出すようなロールプレイをされていたので、その意味でも対比ができて良かったのではないか。

・ランチョン:緩和ケアセンターと疼痛管理 
癌研有明の服部先生のご講演。一昨年初めて服部先生の講演を聞き、その面白さに驚愕したが、今回もとても楽しませて頂いた。ただ若干、癌研有明自体の宣伝?と思われる内容ではあったが。もっと、緩和ケアセンターの立ち上げの留意点や活動内容、全国整備における課題なども伺いたかった。 

 
・講演:病院の世紀の理論 
こちらは私が企画立案した、『病院の世紀の理論』の著者、猪飼周平先生のご講演。本は結構難解なので、この機会に講演で聴いていただくことは意義があると思ったし、内容も是非今後緩和ケア従事者であれば聴いて頂きたい内容である。ただ、講演も中々難解…私は以前から何度も本を読み、講演も伺っているので楽しめたが、他の方々はどうだったかな〜と少し心配。 

 
・専門医フォーラム 
こちらは昨年も出席した、専門医試験を中心としたフォーラム。昨年と同様、試験の受験の仕方や試験内容などが中心で、昨年も出た自分としては結構退屈。じゃあ何で出ていたかと言うと、同じ時間帯に他に出席したいものがなかったのと、最後の神戸大・山口先生の緩和医療Up
to dateが聞きたかったから。このup to dateは、2013年に出された、専門医なら知っておきたい論文数本をレビューする、こちらも初めての企画。出された論文の内容はいずれも知っていたが、山口先生の解釈を伺うことができてとても参考になった。その後の質疑応答で、フロアから「多死時代に向けた専門医のあり方についてディスカッションすべき」という意見が出たが、本当にその通りで、せっかく専門医フォーラムと銘を打っているのだから、こういった受験対策を全国大会でやるよりも、もっと建設的な意見交換ができる場にした方がいいだろうと思う。 

 
・若手グループPCREG飲み会 
今回は、国立ガン研究センター東病院・田上先生と松本先生に幹事をして頂き、若手緩和グループPCREGの飲み会があった。PCREGは、3年ほど前に、緩和ケアに興味のある若手医療者の横のつながりを作る目的で作られたグループで、最初12人で始まったのが今では140人を超えた。普段はメーリングリストを中心としたネットワークだが、実際にこうやって会って交流できたのは貴重な機会だった。ちなみにこのグループは、私のアドレスtonishi0610@hotmail.co.jpに連絡いただければ卒後20年以内の医師・看護師・薬剤師などの医療者および医学生が登録可能である。

・こどもに対するいのちの教育
2日目の朝一番は、二日酔いの中、実は初めての「座長」を務めた、こどもへのいのちの教育のセッションである。これも私が企画したセッションだが、結構コアなテーマなので、人が来るかな?と危惧していたら、300人入る会場は超満員で立ち見が絶えないほどの人気だった。シンポジストを務めて頂いた、小澤先生、堂園先生、安藤先生のプレゼンは三者三様、突然の「アナと雪の女王」上映で笑いが起きれば、子どもとお母さんの別れの話では会場で多くの方が涙、そして実践的な内容も多く含まれとても参考になった。小澤先生の、「いのちの教育で緩和ケアの魅力を伝え、文化を作る」の言葉に、熱くなった参加者も多かったのではないか。小澤先生が、あえてがん教育ではなくいのち、そしてスピリチュアルをメインテーマに取り上げ教育していることに驚きを覚え、「がんという自分と近しくないテーマを扱うより、苦しみを抱えて生きていく普遍的なテーマを扱うほうがいい」といった意図に感銘をうけた。いのちの教育を全国で広めていくにはまだまだ課題も多いが、学術大会でこういった未来を見据えた企画が実現できたのは良かったと思う。

・認知症の緩和ケア 
認知症の各種ケアについての専門家が一同に介したこの企画は、かなり豪華であった。結局は、どのケア方法も似たような部分をコアとしているし、それはケアをする立場として当たり前のことなのだけど、中々難しいなあということを感じた。特に気になったのはユマニチュードケアについてで、これは本もDVDも買ったので、自分でも読むし、院内研修会も企画してみたいと思う。

・ポスターセッション 
今回は口演がなく、公募演題は全てポスターであったが、全てのポスターを見て回ることができ、結構勉強になった。PCREGからも、森先生を中心とした若手ニーズに関する全国量的研究の結果を発表。優秀演題に選んで頂き、今後の日本の教育研修にとって重要な知見を提供できたと考えている。
ただ、ポスターセッションはやはり数は多すぎ。いや、厳密に言えば数は多くてもいいのだが、全体的な質がもっと高く、魅力ある研究・報告を増やしていかないとならない。

・来年に向けて 
今回の学会は中々成功と言えるものが多かったのではないかと思うが、それでも学会後の組織委員での反省会では、今回の課題と来年に向けての課題が多数出されていた。全国から人を集めるのだから、交流+重要な意見交換、質の高い研究・報告に対するディスカッションができる姿を目指していきたい。
来年は横浜。今回の反省を生かし、より有意義な学術大会としていけるよう、微力ながらこれからも尽力していきたい。

2014年6月18日水曜日

腫瘍内科と緩和ケアの統合

腫瘍内科と緩和ケアの統合について、近年論文も発表されてきており、世界的にも注目が集まってきている。

緩和ケアは治療早期から関わることがベスト、という中で、緩和ケア医も抗癌剤治療などの内容に通じていることは重要であるし、腫瘍内科医にとっても、担当する患者さんのうち(専門にもよるが)、半数以上は根治が難しい緩和的化学療法の方であり、自らも緩和ケアを提供できる必要がある。

このように書くと、腫瘍内科と緩和ケアの統合についてのシステム構築や教育研修体制整備はすぐにでも開始すべきである、と思われるかもしれないが、ことはそんなに簡単ではない。
単に、同じ科の中に腫瘍内科医と緩和ケア医がいて、定期的にカンファレンス(キャンサーボードのように)を行っていれば「統合」されたことになるのか?それは必ずしも真ならず、だろう。腫瘍内科医、緩和ケア医の双方が、お互いの領域をある程度カバーできるくらいでないと、実際には「統合」されたとは言い難い。まずは双方の教育こそが大切である。

しかし、どのように教育研修体制を作っていけばいいかも、わかっていない。研修医が腫瘍内科を半年、緩和ケアを半年、ローテート研修すればそれで学んだことになるのか?それとも、腫瘍内科も緩和ケアも一緒に学べるような部門を設立した方が良いのか?
そもそも、本邦においては腫瘍内科も緩和ケアも、専門科としては新しい部類に入る分野であり、大学での講座も少ないし、ましてや両者が統合されて教育を行っているところはもっと少数である。
これは、大学だけではなく、市中病院などについても同じ事が言える。

当院では、来年から正式に私が「腫瘍内科」を標榜し、消化器癌の臨床と院内のがん治療体制の整備を行っていくことになった。ただし、ケアセンターから大きく離れるわけではないので、これまで緩和病棟・緩和チーム(緩和ケアセンター)・在宅ケア・地域包括ケアを一手に行っていた、かわさき総合ケアセンターに、腫瘍内科としての機能が加わることになる。
うちのボスは「抗癌剤治療から緩和病棟、在宅ケアまで。がんも非がんも」1つのセンターで臨床・教育を行っていくことを考えているようで、これが実現していけば、当院はかなり最先端な教育研修施設となりうるのではないかと期待している。

腫瘍内科と緩和ケアの統合、そしてそのための教育を日本で展開していくための道のりは遠い。しかし、できる範囲で各施設が工夫を凝らし、国内外のさらなる研究や実践の内容を取り入れ、患者さんに取って有意義なシステムを作っていくことが求められてきている。