2012年6月23日土曜日

緩和医療学会所感

今年は神戸にて行われた緩和医療学会。今回は学会以外の会議やら打ち合わせやらで、聴講できたものがあまりなかったのだが、記憶の確かなうちに振り返っておこう。

・非がんの緩和ケア
心不全の緩和、ALSの緩和の発表はとっても興味深く拝聴した。在宅看取りの発表は一症例の物語の「語り」で、一昔前の緩和学会を思い起こさせるような。関根先生の話も総論、また症状緩和の面では納得できるものだった。しかし、ディスカッションの時間がちょっと短い印象で、じゃあどうやって日本に非がんの緩和ケアを広めて行くの、というところに至らなかったのが残念。私も、心不全やALSの突然死とその説明について質問したが、もう少し全体を考えた質問すれば良かったと反省。

・ポスターセッション
今年は昨年と違い貼りっぱなし、ではなく座長が立っての発表形式だった。やはり、この形式の方が私は好きである。限られた演者の発表しか聞けない、というデメリットもあるが、きちんと話を頭に入れるにはこちらの方が勉強になる。自分の発表もまあまあ盛況であったが、私の次に発表した放射線の先生の発表(モーズペースト使う前に放射線治療考えろよ!という)が痛快だった。緩和ケア医はホスピスに来たらついつい積極的治療の選択肢を忘れがちだが、緩和的照射の適応をもっと考えるべきだね。2日目の低活動生せん妄を見逃すな、という発表も面白かったな。ただ、皆さん声は大きく、楽しそうに発表しましょうね。CARTの発表がやたら増えたように見えたのも気になったなあ。

・医師の卒後研修
序盤はPEACEと指導者研修会、あとは研修医が困っていることについて、診療所への教育、SHAREの教育についての発表。ディスカッションは35分程度と結構あったのだが、序盤のPEACEについての話が結構メインになったところで、「このシンポジウムは卒後教育について話し合う場じゃないのか」と怒って帰る先生もいて…。確かに35分でも議論足りない感じでしたね。私の質問も意図が不明確であまり良くなかったのかも(私は、PEACEにしても指導者研修会にしても、継続して何回も出るような作りになっておらず、1度出れば十分、という参加者が多く、現行のセミナーではその後、スキルアップするためのセミナーが不足しているのでは、だから何度でも毎年参加したくなるようなセミナーが必要だよねという意図だったのだが、PEACEにも何度でも出ていいよ、という返答が帰ってきたので…。指導者研修会のブラッシュアップセミナーがあるという話しを聞けたのは収穫)

・若手緩和医フォーラム
自分が主催したフォーラムだったので、かなり緊張したが盛況のうちに終えることができて良かった。本当にファシリテーター、参加者の皆様のおかげ。内容はまだ細かくは書けないけれども、みんな同じようなことで悩んでいるんだなー、結構孤独感あるんだよね~、やっぱり横のつながり作って行くことが大事だよね…、という感じであった。このような会を企画してくれてありがとう、という声をいただけたことも嬉しかった。その後の、夜の飲み会も良かったです。

・モーニングセミナー:緩和ケアチーム
順天堂大、奥野先生の講演。奥野先生とは、神奈川がんセンター時代に色々と一緒に働いたこともあったので、相変わらず話上手だな~、というのが第一印象。チームの個性を殺さないように、チームが成長して行くためには、という話でためになった。緩和チームの発表、というと自院での活動報告して終わり、なんていう発表も多々あるからね。これは聞いて正解。

・早期からの緩和ケア
海外演者の発表を交えたPDであったが、日本人演者の自施設、疾患に偏ったバイアスいっぱいの発表の連続に閉口。まあ、それはそれとして、総合討論は45分程度時間があったにも関わらず、座長がフロアーを無視すること30分。座長からの質問のテーマは「結局のところいつから緩和ケアを導入すべきか」と聞いて「やはり診断の時(Stage1も含めて!)からでしょうなあ」「精神的な不安を解消すべきでしょうな〜」「治療医と患者の教育が大事ですな」とボヤ~っとした議論に終始。そう思うなら、具体的に実現にはどういう問題があってどう行動すればそれが実行できるの?人員の確保は?といったような深いところに一向に踏み込まない。あとは「乳がんでは~」「外科では~」と偏った意見を言うのみで大極的な議論にもならなかったり、「疼痛や不安の解消というニーズを探ることが大事、そのニーズが出た時にそこにチームがいる、という体制がいい」なども(私は個人的には、患者さんが主治医などに対しニーズを表出するなんてのはかなりのバリアーで、はじめニーズはなさそうでもずっと関わることで支えになる場面があるはずと考えている)。しまいには「化学療法の副作用とかに対応する必要もあるでしょうな。最近の分子標的薬はほとんどが経口になっていますが、そうすると日本は院外処方だから管理が大変と思いますが、その点はどう思います?」と、それ今話すテーマか?といった内容も。ようやくフロアにふられたので「先生方のお話はとても理想論的ですが(本当にこう言いました)、現実には日本で早期から緩和ケアを導入するには様々なバリアーがあると思います。具体的にどんなバリアーがあって、どう解消すべきでしょうか。もうひとつ、不安や疼痛などの症状(ニーズ)がない患者さんには介入しなくとも良いのでは、というご意見のようでしたが、本当に我々ができることはないのでしょうか」と質問したが「バリアーがあるなんてことはみんなわかってるんですよ!」と座長に一蹴され、「具体的に先生の考えるバリアーを挙げて下さい」と、こちらが言わされるハメに。治療医からの紹介が遅れがちなことや、患者さん自身もサポートの体制を知らないことなどをとりあえず挙げましたが、「そうそう、だから医療者と患者の教育が大事ということですよね~」と結論。後者の質問は無視。その教育が難しいから困ってるんじゃない…と思ったが、後ろに質問者が立っていたため再質問は断念。その方は「緩和医が治療中から関わるとなっても腫瘍内科領域の知識は乏しいのでどうしたら良いか」という質問だったが、それも「まあ、それは、連携で…」とご回答。あーもうダメだ~、とプリプリしながら会場を後にしたのでした。まあ、後から頭を冷やして考えると私の質問も抽象的かつ挑戦的で良くなかったかな~とも。もう少し大人にならんと(じゃあ、ブログにも書くなよ、とお叱りを受けそうですが)。

総括
全体的には非常に有意義な二日間で、得られるものも大きかったと思う。ただし、いま日本で話題になっているような重要なテーマの話し合いをするのには、今回の形式のようなシンポジウムやパネルディスカッションでは時間が足りなすぎる気がする。発表の内容も、それが国内の施設中で飛び抜けて先進的な取り組みをしている、もしくはディスカッションテーマにつながっていくような広がりのある内容なら発表の価値があるが、いち口演発表レベルの内容をされても時間の無駄である(口演としては面白いのかもだが)。本気で、今後の日本の方向性を議論する気があるのなら、ディスカンサントでもっと意見をぶつけ合うような趣向も必要だし、時間ももっと必要と思う。それともこれがパネルディスカッションの限界?パネルディスカッションの運営下手?どちらなのでしょう。これならワークショップ形式のディスカッションの方がよほど参考になる意見出るさね。今後の学会での運用の課題と感じる。ポスター発表は今回のような発表形式を来年も期待したい。今年は看護師さんや企業の方も結構質問したりしていて面白かったね。緩和学会にもまだまだ課題は多いが来年も期待したい。自分も、質の高い発表や、会場全体のためになるような質疑を心がけたいと思う(このへんはまだまだ)。

2012年6月15日金曜日

緩和コンサルタントと主治医との差

緩和コンサルタントとして仕事をはじめて2ヶ月ちょっと経った。
コンサルタントの仕事は岩田健太郎先生の『コンサルテーション・スキル』を参考にし、
「主治医となるべく直接または電話でディスカッションする(カルテを交換日記にしない)」
「自分が行った診療内容を根拠を含めて詳細に書く(根拠が不明だと主科が混乱する、というのと教育効果を期待)」
「コンサルタントは主治医ではないが、きちんと患者さんの診療に責任をもってあたる」
など。

しかし、岩田先生はあくまで「感染症コンサルタント」であり、それは「緩和コンサルタント」とは少し違うのではないかなーと最近感じるようになってきた。
それは、院内の他の「チーム」、例えばNSTやICTの活動スタイルと、自分たちの活動スタイルが全く異なる、というところからもわかる(当院だけでなく、他の病院のチーム活動を含めても)。
つまり、NSTやICTは、それぞれ「栄養」や「感染」という専門性で動いているが、その業務のほとんどは、その「専門」となる部分「のみ」であり、主科の大本となる治療方針や患者さんの人生に踏み込んでいくことはほとんどない。
一方、緩和チームの活動は、それだけでは済まない。
患者さんの人生に踏み込んでいく必要があるし、場合によっては主科の方針を変えるように動かなければならないこともある。
それは緩和コンサルタントが患者さんのQOLを上げる、ということを至上命題にあげている以上、仕方がない(中には痛みだけとるのが自分たちの仕事よ~という緩和チームもあるのかもしれないが)。

そうはいっても緩和コンサルタントは主科の主治医や担当医とは違う。
緩和コンサルタントは患者さんからみれば、やはり補助的な立場、ということになろう。
しかし、その立場を逆手に取ると、新しい存在意義があるな、ということに気づいたのである。
それは「意志決定支援」。
これは、海外の論文ではすでに言われていることであり、先進的な緩和チームではすでに当たり前なのかもしれないが、自分はいまいちピンときていなかったので、今回自分の仕事を通して少しずつわかるようになってきた気がする。
例えば、Temelの論文で「早期からの緩和ケア」はQOLや不安、抑うつが改善し、生存期間が延びる可能性が指摘されているが(NEJM. 2010;363:733-42)、そのうち早期からの介入群(EPC群)では化学療法60日以内死亡が少ない、ということや(J Clin Oncol 30:394-400. 2011)、治療開始前には自分の病状が正確に理解できていなかったのがEPC群ではそれが改善する、といったことが報告されている(J Clin Oncol 29:2319-2326.  2011)。これはつまり、緩和チームが関わることにより、自分の病状を正確に理解し、体力が落ちてくる時期に無駄な抗がん剤治療をしないことが予後改善につながる可能性を示唆する。
主治医はえてして、患者さんに正確な病状を伝えることを躊躇する。
医師も人間、患者さんにとってつらい話をすることは、「信頼関係が崩れるのではないか」「患者を傷つけるのではないか」と、話をぼかしてしまうこともある。情に流されて無駄とわかっている抗がん剤を投与してしまうこともあるのだろう。
また、担当医は主治医ではないから、「方針や病状については主治医に聞いて下さい」となる。
しかし、コンサルタントは何しろ補助的な立場なので、主治医のように「信頼関係」が重視されるわけではなく(軽視して良いということではないが)、かといって担当医とも違い立場は独立している。
そのため「患者さんにとってつらい話」を、自分が憎まれてもいいから、ある意味捨て身の覚悟で話すこともできる。
生死にかかわる話はときとして残酷である。心優しい主治医、これからも関係を一生続けていかなければならない主治医にとっては、それは大きなストレスになる。また、それをゆっくり話し合うほどの時間も主治医にはない。
しかし、生死に関わるからこそ、真摯に話し合わなければならない。
緩和コンサルタントは、そこに関わることができる。「言葉」は緩和医の最も得意とする薬、という点もある。時にはナイフを用い、時には包帯を巻くように。主治医の曖昧な言葉を翻訳することもできる。

緩和コンサルタントとしての仕事は、やる前はあまり有用と思っていなかったが、
その本質をつきつめていくと実は奥が深そうである。
まだまだ自分の知らない世界がありそうでワクワクする。

井田病院がんサロン1回目

6/14にリニューアルした1回目のがんサロンが開催された。
参加者はなんと7名!で昨年の参加者ほぼ1年分を1回で集められたことになる(というか去年までが少なすぎ)。

今回の勉強会のテーマは「がんのサポート体制」。
以外と知らないであろう、がん患者さんやご家族をサポートする体制、制度、スタッフなどについてお話させて頂いた。
例えば、がんサロンにしてもそうだし、サポートチーム(緩和ケアチーム)やケースワーカー、がん相談員などなど・・・。「がんになっても一人で悩まないで!」というメッセージをこめて・・・。

その後のサロン(意見交換)も、最初はこちらがわも初めて、ということで緊張、どうなることかと思ったけれども、いろいろ話していくうちに皆さん打ち解けられて、自分の中の思いや中々相談できなかったこと、などワイワイ話せてよかったかな~、と。
特に最初に心配していたのは、サロンの目的は「ピアサポート」で、患者さんやご家族が、それぞれの体験や悩みをお互いに話し合うことで考えを整理したり、癒やしを得たり、というところが建前なのであるが、医療スタッフも輪の中に入ることで「医療スタッフ対患者さん」という感じで、「サロン(ピアサポート)」というよりは「集団相談会(個別面談が複数ある)」みたいになるんじゃないかな~、というのがあった。かといって、初対面の患者さん同士にお任せして「さあ、どうぞ!」とやっても気まずいだろうな~というのもあり・・・今回はスタッフも輪の中に入り参加させて頂いた。
でも、途中からは普通のおしゃべり会みたいに、患者さん・ご家族同士でもワイワイ話せていたので、ちょっとほっとしたところである(まあ「集団相談会」に終始するならそれはそれで、と思っていたところもあるが)。

いろいろと改善すべきポイントもある。
例えば、
・平日日中の時間帯では仕事をしている人は参加できない。夜か土日にもやってほしい。
・アクセスがよくない。駅前のカフェなどでできないか。
・宣伝がまだまだ足りない。
・・・などなど

改善できるところは改善し、まずはひとつずつやっていきたいとおもう。
7月からはとりあえず「夜の部(18:00~20:00ころ?)」ができないかどうかを検討中。
次回は6/28(木)14:00~16:00で、テーマは「がん情報の集め方」。
またよろしく~。