緩和医療学会所感

今年は神戸にて行われた緩和医療学会。今回は学会以外の会議やら打ち合わせやらで、聴講できたものがあまりなかったのだが、記憶の確かなうちに振り返っておこう。

・非がんの緩和ケア
心不全の緩和、ALSの緩和の発表はとっても興味深く拝聴した。在宅看取りの発表は一症例の物語の「語り」で、一昔前の緩和学会を思い起こさせるような。関根先生の話も総論、また症状緩和の面では納得できるものだった。しかし、ディスカッションの時間がちょっと短い印象で、じゃあどうやって日本に非がんの緩和ケアを広めて行くの、というところに至らなかったのが残念。私も、心不全やALSの突然死とその説明について質問したが、もう少し全体を考えた質問すれば良かったと反省。

・ポスターセッション
今年は昨年と違い貼りっぱなし、ではなく座長が立っての発表形式だった。やはり、この形式の方が私は好きである。限られた演者の発表しか聞けない、というデメリットもあるが、きちんと話を頭に入れるにはこちらの方が勉強になる。自分の発表もまあまあ盛況であったが、私の次に発表した放射線の先生の発表(モーズペースト使う前に放射線治療考えろよ!という)が痛快だった。緩和ケア医はホスピスに来たらついつい積極的治療の選択肢を忘れがちだが、緩和的照射の適応をもっと考えるべきだね。2日目の低活動生せん妄を見逃すな、という発表も面白かったな。ただ、皆さん声は大きく、楽しそうに発表しましょうね。CARTの発表がやたら増えたように見えたのも気になったなあ。

・医師の卒後研修
序盤はPEACEと指導者研修会、あとは研修医が困っていることについて、診療所への教育、SHAREの教育についての発表。ディスカッションは35分程度と結構あったのだが、序盤のPEACEについての話が結構メインになったところで、「このシンポジウムは卒後教育について話し合う場じゃないのか」と怒って帰る先生もいて…。確かに35分でも議論足りない感じでしたね。私の質問も意図が不明確であまり良くなかったのかも(私は、PEACEにしても指導者研修会にしても、継続して何回も出るような作りになっておらず、1度出れば十分、という参加者が多く、現行のセミナーではその後、スキルアップするためのセミナーが不足しているのでは、だから何度でも毎年参加したくなるようなセミナーが必要だよねという意図だったのだが、PEACEにも何度でも出ていいよ、という返答が帰ってきたので…。指導者研修会のブラッシュアップセミナーがあるという話しを聞けたのは収穫)

・若手緩和医フォーラム
自分が主催したフォーラムだったので、かなり緊張したが盛況のうちに終えることができて良かった。本当にファシリテーター、参加者の皆様のおかげ。内容はまだ細かくは書けないけれども、みんな同じようなことで悩んでいるんだなー、結構孤独感あるんだよね~、やっぱり横のつながり作って行くことが大事だよね…、という感じであった。このような会を企画してくれてありがとう、という声をいただけたことも嬉しかった。その後の、夜の飲み会も良かったです。

・モーニングセミナー:緩和ケアチーム
順天堂大、奥野先生の講演。奥野先生とは、神奈川がんセンター時代に色々と一緒に働いたこともあったので、相変わらず話上手だな~、というのが第一印象。チームの個性を殺さないように、チームが成長して行くためには、という話でためになった。緩和チームの発表、というと自院での活動報告して終わり、なんていう発表も多々あるからね。これは聞いて正解。

・早期からの緩和ケア
海外演者の発表を交えたPDであったが、日本人演者の自施設、疾患に偏ったバイアスいっぱいの発表の連続に閉口。まあ、それはそれとして、総合討論は45分程度時間があったにも関わらず、座長がフロアーを無視すること30分。座長からの質問のテーマは「結局のところいつから緩和ケアを導入すべきか」と聞いて「やはり診断の時(Stage1も含めて!)からでしょうなあ」「精神的な不安を解消すべきでしょうな〜」「治療医と患者の教育が大事ですな」とボヤ~っとした議論に終始。そう思うなら、具体的に実現にはどういう問題があってどう行動すればそれが実行できるの?人員の確保は?といったような深いところに一向に踏み込まない。あとは「乳がんでは~」「外科では~」と偏った意見を言うのみで大極的な議論にもならなかったり、「疼痛や不安の解消というニーズを探ることが大事、そのニーズが出た時にそこにチームがいる、という体制がいい」なども(私は個人的には、患者さんが主治医などに対しニーズを表出するなんてのはかなりのバリアーで、はじめニーズはなさそうでもずっと関わることで支えになる場面があるはずと考えている)。しまいには「化学療法の副作用とかに対応する必要もあるでしょうな。最近の分子標的薬はほとんどが経口になっていますが、そうすると日本は院外処方だから管理が大変と思いますが、その点はどう思います?」と、それ今話すテーマか?といった内容も。ようやくフロアにふられたので「先生方のお話はとても理想論的ですが(本当にこう言いました)、現実には日本で早期から緩和ケアを導入するには様々なバリアーがあると思います。具体的にどんなバリアーがあって、どう解消すべきでしょうか。もうひとつ、不安や疼痛などの症状(ニーズ)がない患者さんには介入しなくとも良いのでは、というご意見のようでしたが、本当に我々ができることはないのでしょうか」と質問したが「バリアーがあるなんてことはみんなわかってるんですよ!」と座長に一蹴され、「具体的に先生の考えるバリアーを挙げて下さい」と、こちらが言わされるハメに。治療医からの紹介が遅れがちなことや、患者さん自身もサポートの体制を知らないことなどをとりあえず挙げましたが、「そうそう、だから医療者と患者の教育が大事ということですよね~」と結論。後者の質問は無視。その教育が難しいから困ってるんじゃない…と思ったが、後ろに質問者が立っていたため再質問は断念。その方は「緩和医が治療中から関わるとなっても腫瘍内科領域の知識は乏しいのでどうしたら良いか」という質問だったが、それも「まあ、それは、連携で…」とご回答。あーもうダメだ~、とプリプリしながら会場を後にしたのでした。まあ、後から頭を冷やして考えると私の質問も抽象的かつ挑戦的で良くなかったかな~とも。もう少し大人にならんと(じゃあ、ブログにも書くなよ、とお叱りを受けそうですが)。

総括
全体的には非常に有意義な二日間で、得られるものも大きかったと思う。ただし、いま日本で話題になっているような重要なテーマの話し合いをするのには、今回の形式のようなシンポジウムやパネルディスカッションでは時間が足りなすぎる気がする。発表の内容も、それが国内の施設中で飛び抜けて先進的な取り組みをしている、もしくはディスカッションテーマにつながっていくような広がりのある内容なら発表の価値があるが、いち口演発表レベルの内容をされても時間の無駄である(口演としては面白いのかもだが)。本気で、今後の日本の方向性を議論する気があるのなら、ディスカンサントでもっと意見をぶつけ合うような趣向も必要だし、時間ももっと必要と思う。それともこれがパネルディスカッションの限界?パネルディスカッションの運営下手?どちらなのでしょう。これならワークショップ形式のディスカッションの方がよほど参考になる意見出るさね。今後の学会での運用の課題と感じる。ポスター発表は今回のような発表形式を来年も期待したい。今年は看護師さんや企業の方も結構質問したりしていて面白かったね。緩和学会にもまだまだ課題は多いが来年も期待したい。自分も、質の高い発表や、会場全体のためになるような質疑を心がけたいと思う(このへんはまだまだ)。

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