2011年2月9日水曜日

抗癌剤投与時の血管確保は誰が?

ちょっと論文風に書いてみる。

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【はじめに】
昨今、これまで医師しかできなかった医療行為を「看護師も行って良い」とされるケースが増えてきている。
そのような状況の中、癌診療の業界で最近話題になっているのは「抗癌剤投与時の血管確保は誰がするのか?」という点である。
抗癌剤は、種類によっては血管外に漏れることで重篤な後遺症を発生させる例があるため、血管ルート確保は医師が行うべき、という考えが主流であった。
しかし、医師の方が血管確保が下手、いちいち電話をして医師を呼び出して待ってないと点滴が開始できない・・・など、様々な業務上の効率の悪さも指摘され、最近では訓練を受けた看護師が、血管確保を行っている病院も増えてきている。
今回、「抗癌剤投与時の看護師による血管確保」についてtwitterを用いて意識調査を行い、その結果を報告するとともに、若干の文献的考察を加え報告する。

【目的】
「抗癌剤投与時の看護師による血管確保」の是非・問題点に対する、医療者および一般の方々の意識を調査する。

【方法】
2011/2/8 朝10時頃にtwitter上で

【拡散希望】抗癌剤投与時の抹消ライン確保は医師ではなく(訓練を受けた)看護師が行って良いのでは、と最近議論になっています。昨年の癌治療学会では「看護師が血管確保する安全性は高く、医師を待つために点滴開始時間が遅れるなどの問題が解消」と報告もあります。皆様のご意見をお聞かせ下さい。
というツイートを流し、2011/2/9 午前10時までに得られたリプライの数および内容を検討する。
同一のアカウントからの回答は、同じ内容を繰り返している場合にはカウントから除外した。

【結果】
得られた有効回答数は19件であった(母数は拡散してしまっているため測定不能)。
そのうち、看護師による血管確保に肯定的な意見13件(68%)、否定的な意見4件(21%)、条件付で肯定2件(11%)であった。
否定的な意見の理由としては、責任の所在、仕事量が増えることの負担、抗癌剤は治療の意味合いが強すぎ看護師が行うべきではない、過去に(医師が)合併症起こしたため看護師末梢確保どころかCV確保の方向性、という意見が各1件ずつ見られた。
条件付で肯定、としては責任の所在を明確にしてもらえるなら、全員ではなく「人」で判断して任せるべき、という意見が1件ずつ見られた。また、肯定意見だが、現状は「看護師血管確保の後、逆血を医師が確認する」という条件がついている、という報告も1件見られ、逆血が確認できない場合はvesicant drugの場合は刺しなおしをおこなっているということであった。
  
【考察】
上記の結果からは、肯定もしくは条件付での肯定が全体の3/4以上を占めており、抗癌剤投与時においても看護師による血管確保には肯定的な意見が多いことが明らかとなった。
抗癌剤投与時の看護師による血管確保については、2010年の癌治療学会において、自治医大看護師である田中らにより、「外来化療センターにおける看護師による血管確保の導入」として報告されている(日本癌治療学会誌 45(2) ;379, 2010)。田中らによると、外来化学療法センター開設当初は、医師による血管確保(主治医制または当番医制)が行われていたが
(医師側の問題)
・医師の業務の中断
・頼まれ仕事、責任の所在が不明確
・血管確保のskill (sense?)
(看護師が直面する問題)
・患者からのストレス
・医師からのストレス
・業務のペース配分ができず繁雑化
といった問題から、看護師による血管確保が導入となった。
導入における看護師の不安としては「経験がない」「合併症への不安」「責任の所在」「業務量増加への不安」「看護部の理解」「患者との信頼関係」が挙げられた。
以上を解決するため、看護師を守るルール作り、講義・技術研修の実施、認定制度の導入などの準備を約1年かけて行い、血管外漏出時は主治医と対応、穿刺困難例は医師が対応(患者希望の場合も)、看護師による血管確保のお知らせ文を外来に掲示するなどの対応を行った。
結果、血管確保までの待ち時間中央値は導入前9分(2-35分)であったが、導入後には6分(1-10分)と短縮された。一方で、血管外漏出の頻度は導入前は10/6807件(0.1%)、導入後は6/7082件(0.08%)であり、変わりがなかった。以上から、外来化学療法における看護師による血管確保は患者、医師、看護師にとってメリットが大きい、と結論されている。
  
今回twitterで得られた意見では、各施設毎に格差が大きく、大学病院では未だに全ての血管確保を医師が行うことが義務づけられている施設もあり、抗癌剤投与時の血管確保までの道のりが遠いことが示唆される。「責任の所在」の不安も強いと考えられ、医師の指示のもと、というルールを院内で徹底することが必要である。また、それでも不安・抵抗が強い場合には、vesicant drugの投与については医師が血管確保を行い、田中らのようにデータを出して安全性を示す、というアプローチも有効かも知れない。
また、看護師による血管確保の後、医師が逆血を確認するというシステムを取る施設もあるが、結局の所「医師の仕事中断」「待ち時間によるストレス」の問題は解決できず、非効率的なシステムと言わざるを得ない。
今回の調査の限界としては、質問項目が肯定的な意見を引き出すように誘導されていること、有効回答率が明らかではないこと、有効回答数が少ないことが挙げられる。今後、より大規模でよくデザインされた全国調査が行われることが望ましい。
  
今回の調査では、看護師が血管確保を行うことに肯定的な意見が多く、また田中らのデータは、看護師による血管確保は安全で、業務の効率化および患者の満足度向上につながることを示唆しており、今後各施設で、ルール作りと研修体制を確保し、更なるデータ蓄積を行っていくことが重要と考えられる。ただし、同時に、看護師の業務の負担が増えないよう、環境の整備および医師との協力体制を作っていくことが必要と考えられる。
今後、このような体制が日本全国に広まっていくことを期待したい。
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何かの雑誌に投稿できそうだけど、「方法」が思いつきで信頼性低いからrejectだろうなあ。
自治医大のデータは癌治療学会で発表されたものをそのまま転記しているので、何らかの発表の時に転用可

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