【原著論文】カレーと日本酒の調和性に関する対塩辛スコアを用いた比較研究

【原著論文】
カレーと日本酒の調和性に関する対塩辛スコアを用いた比較研究
A Comparative Study Using "Tai-Shiokara score” on Harmony between Curry and Sake

西智弘1)、石井麗子1)、武見綾子1)、稲田清人2)、奥村佑子2)

1)一般社団法人プラスケア
2)株式会社サウンドキッチン

【抄録】
カレーと日本酒は、ともに日本を代表する食のひとつといえるが、その調和についてはかねてより多くの議論がなされてきた。これまでの報告は個人的な感覚に基づくものが多く、今回「対塩辛スコア」を用いたカレーと日本酒の調和性に関する比較試験を行ったため報告する。(方法)2018年1月30日に健康な男女25名を調査員として募集し、実際にカレー・日本酒・塩辛を食してもらい、その調和性について数値化して評価した。(結果)調査員23名が参加し調査を行った。全種類の対塩辛スコアは4.5点であった。10件以上の有効回答数があった日本酒に絞った場合、最もスコアが高かったのは「天吹」「天狗舞」であり、スコアが低かったのは「喜多屋」であった。(考察)本研究は、カレーと日本酒の調和性を「対塩辛スコア」を用いて客観的に評価することを試みた初めての研究である。カレーと日本酒の調和性は、塩辛には及ばないものの、評価としては比較的高かった。今後より多くの日本酒との調和性を検証し、その可能性について追求していくべきと考える。


(はじめに)
 カレーと日本酒は、ともに日本を代表する食のひとつといえるが、その調和についてはかねてより多くの議論がなされてきた。
 日本酒を構成する香りや味わいの成分は800種類と、ワインの600種類より多い。そのため、どんな味わいとも調和しやすく、またコハク酸という貝類の旨み成分としてよく知られている有機酸が入っていることも、料理のおいしさを引き立てることの一因と言われている1)。その結果として、日本酒は反発せずさまざまな料理に添って包み込む効果があり、米からできているお酒のために米と合う料理であればカレーも含め何でも合う可能性が高いと言われている1)。またその他にも、「純米系で濃厚な米の味をもつ日本酒」や「重厚で深いボディを持ちかつ柔らかい味わいを持った日本酒」であれば合うという報告も多数みられる2-4)。しかし一方で、「山田錦を用いた日本酒とは合わない」や「数あるおつまみのうちで最も合わなかった」という小規模な報告も散見される2, 5)。
 しかし、今までの報告の多くは個人の体験談または小規模事例の結果であり、数十人規模で検証された研究はまれである。また、「合う」「合わない」というのは個人的な感覚に過ぎないが、それを数値化することができれば客観的にカレーと日本酒の調和性を評価できると考え、今回「対塩辛スコア」を用いたカレーと日本酒の調和性に関する比較試験を行ったため報告する。

(方法)
 2018年1月30日に健康な男女25名を調査員として募集し、コスギカレー(川崎市中原区新丸子東2-897-11)にてカレーと日本酒の調和について調査を行った。
 対塩辛スコアとは、カレーと日本酒の調和性を審査するために考案されたスコアリング方式である。調査員は0~10のスケールを用い、イカ塩辛(スルメイカ 学名Todarodes pacificus)と日本酒の調和性を「5」としたとき、これを基準として、カレーと日本酒の調和性をスコアリングする。カレーと日本酒の方が、塩辛よりも合うと評価した場合は6~10点とし、逆に塩辛の方が合うという場合は0~4点とする。塩辛は、日本人が少なくとも500年以上前から常用していた食材であり、日本酒との調和性については明確な大規模調査などは認められないものの、多くの日本人が標準的にその調和性の高さについて認めているものと考え、比較対象として選定した6)。
 日本酒は6種類を用意し、調査員は1名につきそのうちから2または3種類の日本酒を選択し、カレーと塩辛それぞれとの調和性を評価した。
 審査が終了したところで、評価表を回収しその点数について平均値を算出した。
 本研究において、調査員の参加についてはインターネット上で公募の上、直前に参加意志の最終確認を行った。また、調査員の安全確保のため、2度のパイロットスタディを行い、カレーと日本酒を同時摂取しても健康上の問題はないことを少人数で確認した 7, 8)。

(結果)
 25名の調査員募集に対し、23名が参加し調査への協力への同意を得た。20名が3種類の日本酒を評価し、2名が2種類、1名は1種類のみを評価した。
 調査の結果について図1に示す。全種類の対塩辛スコアは4.5点であった。また、全ての日本酒のうち、最もスコアが高かったのは「惣誉」であり、スコアが低かったのは「菊姫」であった。10件以上の有効回答数があった日本酒に絞った場合、最もスコアが高かったのは「天吹」「天狗舞」であり、スコアが低かったのは「喜多屋」であった。
図1:カレーと日本酒の調和性に関する対塩辛スコア

(考察)
 本研究は、カレーと日本酒の調和性を「対塩辛スコア」を用いて客観的に評価することを試みた初めての研究である。これまで、多様な評価の方向性があると考えられる「個人の味覚」を、塩辛と日本酒という、日本人にとって味の想像しやすくかつ自宅などでも再現が容易な基準軸を設定し、カレーと日本酒と比較して数値化したことは新奇性が高いと評価される。
 また、今回の結果としてカレーと日本酒の調和性は、塩辛と日本酒よりも若干劣ると評価された。つまり、先行報告ではカレーと日本酒の調和性は高いと評価されていたものが多かったにも関わらず、本研究では相反する結果となったともいえる。しかし、先行報告は塩辛などの基準軸の設定がない中で調和性を絶対評価しているのに対し、本研究は比較研究であり、その方法論が異なる。塩辛の5点を基準として、カレーは4.5点であるので、カレーは塩辛と日本酒との調和性には及ばなかったものの、評価としては比較的高かったとも解釈される。
 本研究の限界としては、まずサンプル数が多いとは言えない点があげられる。今回用意した日本酒が、カレーと合いにくかったというもので、実際には他の日本酒ではもっと評価が高くなるという可能性は考えられる。2つ目に、塩辛の評価が高すぎたという可能性が考えられる。比較的高級な塩辛を準備したため、相対的にカレーの評価が下がってしまった可能性がある。3つ目に、調査員の酩酊の可能性がある。1回の評価につき約半合(90mL)の日本酒を摂取したため、スコアリングが一部不正確となった可能性が考えられる。また、「惣誉」「菊姫」については有効回答数が少ないため、その数値の信頼性は高いとは言えない点に注意が必要である。
 本研究は、カレーと日本酒の調和性を考えるうえで、新たな研究手法を示し、また今後の研究の発展に資する重要な資料となることが期待できる。

(結論)
 カレーと日本酒の調和性は、塩辛には及ばないものの、評価としては比較的高かった。今後より多くの日本酒との調和性を検証し、その可能性について追求していくべきと考える。


(参考文献)
1) http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20150819/1066032/?P=4&rt=nocnt
2) http://sake-sin.blog.so-net.ne.jp/2010-08-29
3) http://xn--n8jm1b365zob8b1jwa.com/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%85%92/%E3%82%AB%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%81%AB%E5%90%88%E3%81%86%E3%81%8A%E9%85%92/
4) http://kurand.jp/16638/
5) http://maguro-karisuma.com/archives/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%85%92%E3%81%AB%E3%82%AB%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%81%AF%E5%90%88%E3%81%86%E3%81%AE%EF%BC%9F/
6) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A1%A9%E8%BE%9B
7) http://tonishi0610.blogspot.jp/2017/12/blog-post_24.html
8) http://tonishi0610.blogspot.jp/2018/01/blog-post_8.html

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