Pt's Voice005:子供との時間を奪われるなら、治療なんて受けません


その若いお母さんは、震えながら言った。
あなたのがんは治ることはない、治療は抗がん剤だが、長期の入院が必要、
と言われて、前の病院を飛び出して来たらしい。

私には小さい子供がいます
どうせ治ることがないのなら…
治療によって、その子と過ごす体力も時間も奪われたくはない…!

私は答える。
なるほど。よくわかりました。
子供と過ごす時間が、あなたの心の支えなのですね。
だったら、その時間を延ばすために、治療をしませんか?
時間も、体力も奪わないように、薬の調整をすることはできる…
あなたの心の支えを支えるために、お手伝いをさせてはもらえませんか?

そのお母さんは驚いた顔をみせ、少し考えてみます、と診察室から出た。
そして、次の外来で
先生の言っていたことを信じます
治療を受けて、子どもと少しでも長く一緒にいるために

そうですね。
医療に、人生を合わせる必要はありません
あなたの人生のために、医療がお手伝いをしていきます

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Pt's Voice=ペイシェンツ・ボイスは「患者の声」をデジタルアーカイブとして遺すプロジェクトです。

有名人の言葉は時を超え、後世に語り継がれ、その言葉は死ぬことはありません。
一方で、その人生を懸命に生きたひとりひとりの言葉も、その言葉に負けることがない輝きを持っています。
それらの言葉の生を引き継いでいくために、記録を残していきたいと思います。

Pt's Voiceでは私の解釈は一切記しません。
患者・家族と私との対話のみです。
その生の声から何を学ぶか?それは皆さん次第です。

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