「あとどれくらい生きられるのですか?」と聞かれたら

拙書『「残された時間」を告げるとき~余命の告知Ver.3.1』が発売されてから2ヶ月ほどたちましたが、
「こういったことを解説してくれる本がこれまでなかった」
「患者さんと、こういった話をどうしていけばいいかわからなかったので参考になる」
「困っている部下や同僚にも読ませている」
といった感想を頂いています。ご好評いただいているようで何よりです。
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さて、「この本はどうやって作ったんですか?」というご質問を時々頂きます。
前著『緩和ケアの壁にぶつかったら読む本』については、まず出版社から企画の提案があり、それに従い執筆をしました。『緩和ケアレジデントマニュアル』についても基本的には同じ手順です。
一方で、この本は私が企画立案し、草稿を作って出版社へ提出した「持ち込み企画」です。それほど、この本には「多くの方々へ伝えたい」メッセージが込められています。

ただ、本を読んでもらえなければその伝えたいメッセージも伝わりません。
そのために、今回私がとった戦略が「マンガ」であり、その無料公開です。
マンガの持っている訴求性は、文字に比較して強い印象を読者に残しますし、仮に本屋でパラパラと立ち読みしてもらうだけでも、臨床現場への影響を与えられることを意識してシナリオを作りました。
私の細かい要求に逐一応じてくださった、漫画家のこしのりょう先生には本当に感謝しています。

ぜひ、1例目と2例目のマンガと、今回公開する3例目を比較して読んでいただければと思います。
1例目はこちら
2例目はこちら



症例
鈴木千賀子さん(54歳 女性)
鈴木さんは、都内のマンションに暮らす主婦。建設業を営む夫(60歳)と、長男(23歳)との3人で、何不自由ない生活を送ってきました。
しかし、5年前に便の表面に血液が付いていることに気づき、総合病院で検査を受けたところ、直腸癌と診断されました。その時は手術を受け、しばらくは問題なかったのですが、3年前に肝転移にて再発。肝切除の手術も受けましたが、その後数か月で再再発し、腫瘍内科へ紹介となりました。腫瘍内科での抗がん剤治療は大きな副作用もなく、治療を続けてこられたのですが、徐々に治療の効果も乏しくなり、2か月前に抗がん剤治療を中止し緩和ケアへ専念することとなりました。
その後、紹介された地元の病院の緩和ケア外来への通院が始まりました。緩和ケア科初診時は、軽度の倦怠感以外は特に大きな症状もなく比較的元気に通院が可能でした。しかし、画像で見る限り、鈴木さんの肝転移は徐々にですが大きくなってきており、また肺の一部にも転移が出てきていたことから、主治医としては、
「6~8ヶ月程度の余命かな…。来年の桜が見られるかどうか…」
と考えていました。
緩和ケアの主治医は40代男性、気さくで何でも話せるタイプの医師で、鈴木さんは初診時に
「本当に、色々とお話を聞いてくれて…。いい先生で安心したわ」
と涙ぐむ場面もありました。
 さて、今日は鈴木さんの何度目かの定期通院の日です。鈴木さんは、そこでどうしても気になっていることを、主治医に聞いてみようと思っているようですが…





基本的に、「余命の伝え方」は何が最も良い伝え方なのか、という強いエビデンスはありません。このマンガで示したのが「余命の告知Ver.3.1」の方法ですが、この方法が良いという方もいれば、他の伝え方がいい、という方もいます。
なので、実際に余命についてのお話をするためには、この方法も含めた多くの方法の中から、その方の選好やキャラクター、その時に知りたい情報の範囲などを評価したうえで選んでいくべきです。
それを、どのような手順で行っていけばいいか…についてはぜひ本書の中身をご覧ください!

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コメント

  1. 西先生

    いつも学ばせていただいています。

    私たち医療者は患者さんから質問をされると、どうしても答えや説明を求められているように感じてしまいます。
    でも、こういう余命を尋ねるときって、本当に今後のために具体的に答えとして知りたい場合と、スピリチュアルペインの表出として、聞かずにおれなかったという場合とがあるんだなということがわかってきた今日この頃です。
    後者の場合は、答えや正論を提供するんじゃなくて、それよりもまず苦悩を語る場を提供することが大切なんだなと思うようになりました。(もちろん前者の場合でも大切なことなのですが…)

    他の医師の診察の様子など、研修医以来見ることがなくなってしまい、本当にこれでいいのか悩むこともあった中、大変勉強になりました。
    ありがとうございました。

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    1. Aikiさん
      コメントありがとうございます。「苦悩を語る場を提供する」というのはいいですね。この本の中でも、「そもそもその答え(数値など)を本当に求めているのかどうか」というのを評価すべきという一節があります。意外と、苦悩を受け止めていくことで、余命そのものが問題にならなくなるという方もいらっしゃいます。

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