メタ認知は緩和ケア医療者にとって、ワンピースの「覇気」であり、HUNTER×HUNTERの「念」である。

最近ブログを更新していなかったのですが、しばらく書きたかったネタを軽いノリで書いてみます。

で、タイトルが

メタ認知は緩和ケア医療者にとって、ワンピースの「覇気」であり、HUNTER×HUNTERの「念」である。

です。
アニメやマンガに興味がない人は、検索してもらうか読むのをあきらめてもらうかというマニアックな記事です。
でもまあ、ワンピースについては、知らない人というのも少ないだろうと思うのでまだ抵抗感は少ないでしょうか。少年、ルフィが海賊王を目指して海の冒険へ出るというアレです。
HUNTER×HUNTERについては、ちょっとマイナーか。ワンピースよりは世界観が説明しにくいですね(本当は画像を載せたいのですが著作権うんぬんとかで面倒なことになるのは避けたいので断念)。

さて、今回書きたいテーマは「メタ認知」について。
メタ認知についてWikipediaから引用すると

現在進行中の自分の思考や行動そのものを対象化して認識することにより、自分自身の認知行動を把握することができる能力を言う。 自分の認知行動を正しく知る上で必要な心理的能力。 

・Knowledge Monitoring Ability(能力を監視する知識) 
・Knowing about knowing(知っているということを知っていること)
・Cognition about cognition(認知していることの認知) 
・Understanding what I understand(自分の理解していることを理解すること)

の4つの能力からなります。
イメージとしては「頭の中にもう一人の自分がいて、自分をまるで外から見ているように客観視する」という感じです。

この能力と、ワンピースの「覇気」やHUNTER×HUNTERの「念」がどうつながるか、ということですが。
ワンピースでいえば、シャボンディ諸島での戦いの後、ルフィたちが2年の修業期間の中で、それぞれ能力を磨いていくのですが、その中で「覇気」の存在が明らかになります(それまでも伏線としてはありましたが)。HUNTER×HUNTERにおいても、ハンター試験終了までは「念」のことは出てきませんでしたが、天空闘技場のところから突然「念」がストーリーの中心に躍り出てきます。

主人公たちは、その「覇気」や「念」を身に着けた先達と比べて無力であり、例えるなら「裸で戦場に出て鎧兜をつけた戦士と闘っている」というイメージでしょうか。
しかし、それらの概念を知り、修行でそれを見につけた後は、飛躍的に能力が向上し、戦闘を楽に進めることができるようになっていきます。「念」にいたっては、「それを習得することがハンターとして正式に認められるための条件」にまでなっており、それらの世界で生きていくための「基本的技能」のひとつと設定されています。

この過程が、緩和ケア従事者の成長過程に類似しているのです。
「メタ認知」は、それを身に着けることで「自分が何を言っているか、何をしているか、もう一人の自分が客観的に見て判断を下す」ことができるようになります。
このように患者さんをケアしている自分をモニタリングできるようになることを通じて、感情的に過剰なのめりこみや、それに伴うバーンアウトを防ぐだけでなく、ケアの質そのものも高めてくれます。
つまり「覇気」や「念」のように、防御力も攻撃力(?)も大幅に高めてくれる基本的な武器になりうるスキルなのです。
しかし、その習得については誰かが親切に教えてくれるわけではありません。無意識的に発現できている人もいれば、現場で痛い目にあったのちに修練を重ねて習得できる人もいます(こういったところも「覇気」や「念」っぽい)。

ただ、メタ認知は「覇気」の中でも「覇王色の覇気」のように天性の才能がないと開花できない能力ではなく、「中将クラスであれば誰でも身に着けている」レベルの「武装色の覇気」のようなものです(ワンピース知らない人には意味不明ですかね)。
つまり、才能や特殊技能、というわけではなく、修練さえすれば誰でも身に着けることが可能なスキルだということです。
では、どうすれば習得できるかというと、中々一言でいうのは難しいのですが、初歩的なこととしては
「自分の感情の動きを『なんで?』という視点で振り返る」
ということがひとつの方法でしょうか。

「さっき、患者さんに感情的になってしまったのはなんで?」
「いま、哀しいと思っているのはなんで?」

とか。
他にも、ネットを検索すると、メタ認知の鍛え方についてのページがいくつか出てきますので参照にしてみてください。
私の著書の中でも、「メタ認知:離見の見」として、もう少し詳しい説明をしているので、よければ参考にしてください(宣伝です)。


緩和ケアの壁にぶつかったら読む本

¥2,600
単行本: 212ページ
出版社: 中外医学社 (2016/03)
ISBN-10: 4498057163
ISBN-13: 978-4498057166






ちなみに、「覇気」や「念」が海賊やハンターだけのものではないように、メタ認知についても緩和ケア従事者だけの専売特許ではもちろんありません。
他の医療者のみならず、非医療者にとっても身に着けることが有用な場面はたくさんあります(ビジネスの場面や家族との会話などでもけっこう使えます)。

この記事を書こうと思った一番のきっかけが
「がんを持つ患者さんを支える家族」が、どのような心理で支えていけばよいのか、という相談を受けたことからでした。
反射的に「メタ認知のスキルを身に着ければ・・・」と考えたのですが、その発想を冷静に考え直したとき、この状況で家族にメタ認知のことを伝えるのは相当のリスクがある、という考えに至り、発言を止めました。
具体的に、どのようなリスクがあるのか?では、どのようにしていけばよいのか?という点については、長くなりそうなのでまたいずれ稿を分けて書きたいと思います。

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