家庭医療イベントRe: design Med Projectに参加して

2/3本日、家庭医療系のイベント「Re:design Med Project」に参加した。

まあ、一言で言えば「面白い」イベントであった。
個人的には猪飼先生と山崎さんの講演を聴きたいのが第一であったので、そちらが面白かった、とも言えよう。
ただ、他のイベントについてはちょっと「うーん」という部分もあったことは否めない。

その一番の原因は、前回のイベントGeneralist JapanのUstreamを見たときも思ったことだが、
現在の問題点の分析や「プライマリ・ケアは大切だよ」というメッセージが繰り返されるばかりで、具体的な行動プランが何も議論されないこと。
Medical Studioのマニュフェストには「日本に圧倒的な数のジェネラリストが必要だと信じています。それも迅速に。」と書かれていますが、それは同感です。
だとしたら、せっかく全国からジェネラリストをはじめ、それに興味がある専門医やその他一般の方まで参加している貴重な時間を、現状の分析やスローガン繰り返しだけに割いていていいんでしょうか。迅速と言いながらちっとも迅速じゃない。
そもそも、議論されている内容は、私が家庭医療の研修を受けていた5年以上前と、何ら変わりも無いわけです。それで、「迅速に」というところが、首をかしげざるを得ない。
厚労省の班会議なんかの議論じゃあるまいし、保守的な内容ばかりじゃなく、もっとある程度影響力のある人物が「数年後までに○○を××します!(結構過激な内容で)」とか、全体のビジョンを提案して、それに対して「それはおかしい」「言い過ぎだ」「時期尚早だ」とか「いやそれも一理ある」「それくらい過激な意見も必要だ」など喧々諤々やって、「では次回の学会理事会で提案してみましょう」とか「学会総会のテーマにしましょう」とか、そうでなければ主旨に合わないのではないかと思う。

会場にいた方に、上記の件について意見を言ってみると「でも、これから新規にジェネラリストを目指していこうとする人たちや、これまでジェネラリストに興味の無かった他職種の方々も参加しているから、そういう人に現状をわかってもらうためには、こういうイベントも必要なのでは」と意見を頂いた。
それならそれで、そういう主旨でのイベントであると、明言して欲しいところだったが・・・。

ストーリーテリングのセッションは、TED風で、内容はそこそこ面白かったし、思った以上に登壇者の方々のスピーチが上手で驚いた。
しかし、「未来への物語」という割には、過去と現在の話が多く、未来への提言が少なかったのではないだろうか。印象に残っているのは、原先生の「リタイヤした人材で診療所をつくっていく」ということや、佐藤先生の「ナイトスクールで住民との対話を続けていく」ということくらいか。未来への提言では無いが、川島先生の「一生病院総合医」の部分と、長嶺先生の離島での奮闘ぶりは、心に感じ入るものがあった。
それに対し、討論セッションは全体にかなり期待はずれの内容だった。
岡田先生ひとりが気炎を上げていたが、他の参加者は会の趣旨を無視しているのか、討論セッションのはずなのに誰一人として討論をはじめる気配もない。
あれは、いわゆるディベートなのだろうから、たとえ自分の意見と異なる考えだとしても、特に否定論者の方は、相手方の弱点を分析して、とことん攻めるべきだったと思う。それが問題点の洗い出しになるわけなので。
例えば、1回目のセッションでは「ジェネラリスト待望論は是か非か?」というテーマなのに、双方が「是」と最初に言ってしまったから、それで話は終了である。2回目では、そもそも「医療業界を変えるため、企業の方策は通用するか」というテーマで話がされることすらなかった。
結局、医療系のセッションは何を言いたいセッションなのか、ほとんどわからず終わったと言わざるを得ない。このセッションを見て、明日から何が変わるのか?
1回目では実際には「非」の部分にも少しは触れていたのだが、わかりにくかった。ゆでがえるの例を挙げて、現状、国民は低負担で専門的な医療を受けられているのだから、それでいいと思っているのでは、という部分もあったのだ。しかし、最終的には「やっぱり必要」と言っているので、中途半端な意見になっていた。ジェネラリストが多くいる会場で、その非をあげるのは勇気はいるだろうが、困難では無い。会場から出ていたように「臓器別専門性をもってからジェネラリストにならないと思われている」もそうだし、私が言ったように「研修の門戸が狭すぎるので、本当に数を増やそうと思っているのか疑問である」とか、他にも日本での家庭医療の体制を攻めるべきポイントは数多くあるのだから。

それに比べて、猪飼先生と山崎さんの話は内容も一貫しているし、明日からの行動を変えるのに十分な説得力があった。
猪飼先生の話は『病院の世紀の理論』の内容+αで、本人は「あの本がわかりにくかったようで、その内容をよりわかりやすく話すよう呼ばれてます」と語っていたが、今日の講演もなかなかついていくのに大変であった。しかし、QOLを求める時代、病院ではなく地域へ、というメッセージは伝わったのではないかなと思う。
そして山崎さんの話はコミュニティデザインなので、猪飼先生の「病院ではなく地域へ」、じゃあ地域でどういうふうにしていけばいいか、のヒントを与えてくれたように思う。何より、語り口が面白く、引き込まれる。
ただ、どちらも、各地域でどのようにやっていけばいいのか、というノウハウを示したものではないので、すでにヒントがある地域の住人は、良かったろうが、病院内から出たことがない、という方々には、いきなり遠いゴールを見せられて、それに魅せられても、走り方もわからず竦んでしまうのではないだろうか。まあ、それでもスタートラインに着こう、と思えたことが、行動変容の芽を作ったと言えるだろう。

Medical Studioマニュフェストの「次にやること宣言」はすばらしい。
是非応援したいと思うし、実際、サポーターに応募もさせていただき、ボランティア協力もしたいと考えている。
しかし、今後は各イベントをより実り多きものにしてもらいたい。今回のイベントは「コミュニティへ目を向ける」という部分では成功だったと思う。個人的にはいま最も興味があるテーマだったので、私は「面白かった」と最初に言った。ただし多くのジェネラリストにとって、それが優先順位の高い課題かと言われれば、そうとも言えないだろう。early adaptorとなるべき有識者がイベントに参加せず、より実りの少ないものになっていくという悪循環にはまりかねない。

まだ2回目のイベントで試行錯誤もあるだろう。今後に期待したい。

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