緩和医は家庭医からなるべきか?~Cheng先生の講演から

昨日までの癌治療学会の中で、緩和医療学会とのジョイントセッションにて緩和医療の教育や研究を考えるシンポジウムがあった。

その中で、台湾のCheng先生から、台湾の緩和医療の現状をお話し頂いたが、台湾では緩和ケア医の6割が家庭医出身なのだという(2割が内科医、後の2割でその他)。以前に、オーストラリアに留学した緩和ケア医の話を聞いたときにも、同様な話を聞いた。その理由としては「家族を含めてのケア、在宅、包括的プライマリ・ケアのスキルなどが緩和医に求められるスキルとしてみんなが思っているから(家庭医のバックグラウンドが適切だ)」と。

考えることは2つ

①家庭医が本当に緩和ケアのベースであるべきか

Cheng先生がおっしゃる台湾の考えも納得できるし、他にもそういう国があることからもそうだが、家庭医のスキルが緩和ケア医にとって大切であることは間違いない。研修を受けた方がいい、というのは確かである。しかし、「ベースとするべき」というほどか、と言われると疑問は残る。第一、現在の日本で家庭医療を修めようと思ったら初期研修後にさらに3年はかかるので、そこからまたOncologyを勉強して・・・とやっていると医師8~10年目くらいにならないと緩和ケア医の本格的な研修に入れないことになるが(緩和ケア医はある程度人間的にも成熟してからの方が良いという意見もあるだろうが)、それほど長く全ての医師に研修医の身分を強いるのもどうかと思うし、緩和ケア医になりたいと思っていたモチベーションを維持するのも難しいかもしれない。日本の今のシステムからは難しいのではないかと思う。

②緩和ケア医だけではなく、家庭医も不足(ついでに腫瘍内科医も不足)

もちろん、人手が余っている科など、どこにもないのだが、少なくとも「ベースにするべき」と言われるほどOverlapしている分野でお互いに小さなパイを奪い合う必要はあるまい。私はとりあえず、医師が全体に不足している現状では、アメリカのようにひとつの専門性に特化した人材を養成していくことよりも(そういう人材も少数は必要だが)、ある程度ハイブリッドな医師を養成していくしかないと思う。つまり「抗がん剤もできて、緩和ケア全般に通じ、かつプライマリ・ケアや家族も包括的に診られる医師」である。サイコオンコロジーも、IVRも、神経ブロックもできたらなおさらいい。真の意味での「がん総合内科医」である。
ただ、そんなことを全ての医師に求めるのは不可能だ。
私は、研修の段階では上記について全ての研修を受けるべきと思う。例えば、初期研修後、総合内科1年を経験した後、腫瘍内科1年、緩和ケア1年、家庭医療1年、他IVR・サイコオンコロジー・ブロック・病理・放射線など選択で1年で5年のプログラムなど。
そしてその後、それぞれ興味があるところで「抗がん剤中心にやるよ(でも緩和も在宅もできるよ)」「緩和中心にやるよ(でも抗がん剤もやるよ)」「在宅中心にやるよ(でも病院でも診療するよ)」といったDrで、ひとつのチームとして総合的に診療する、という体制である(ひとつの科でというところが重要)。そのためには、ある程度の人材の集約化が必要なのであるが、がん診療の専門性を高めるためには、少なくとも日本の現状では、地域単位での集約化、そして再分散(センター化で人材を集め、研修・教育・研究を行い、育った人材を地域に派遣。必要に応じて地域施設への「往診」も考える)、というシステムが必要と考えている。

私の意見は、極端で机上の空論的であろうが、実際にはこのような意見を出し合い、「緩和ケア医に求められるスキルは何なのか」「どのような医師を養成していくべきなのか」「そのためにどのようなシステムが必要なのか」ということを喧々諤々議論していくべきなのである。私の意見も、そのような中でもまれていく中で、一部の地域には適応可能かもしれないし、もっと現実に即した形に改善できるかもしれない。そのための議論の場がないこと、つくろうという気運もないこと、それが一番の問題と思う。

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