2012年9月17日月曜日

患者の行き場所が無い現状、いつ解決?


患者の行き場所がなくなる、というケースが後を絶たない。
 
私が、緩和ケアを専門に研修しはじめた頃は、そういうケースが多くあった。
これまでの主治医から見放され、緩和ケアを受けられる病院は見つからず。「がん難民」という言葉が流行ったりもした。
それからもう5年がたち、もちろん全国的には昔より状況は改善してきているのかも知れない。
しかし、少なくとも個人的には実感できるレベルでの状況の改善があるようには思えない。
 
「緩和ケアに関する基本研修(PEACE)」は相当数のドクターが受講し、基本的な緩和ケアは多くのドクターが提供できるように、名目上はなっているはずなのに「自分は緩和ケア専門ではない、抗がん剤治療をしないならうちに定期通院する理由はない、何かあったら来ても良いけど、早く緩和ケアが受けられる病院を探して転院しなさい」と言い放たれ、次回予約なしで終診、である。「治療の適応がないから緩和ケアの病院に行きなさい」と門前払い、というケースもある。
 
 その一方で、緩和ケアを提供する病院に相談すると、「緩和ケアの外来は入院審査の外来だけで2ヶ月待ち、その後も入院まで外来通院はありません」と言われる。つまり、院外から紹介された患者さんを、定期的にフォローするための外来を置いている病院が圧倒的に少ないのだ。外来はあっても、院内にそもそも入院していた患者さんをフォローするための外来のみ、ということだ。
 
「自分は緩和ケア専門ではない」といって診療を拒否する一般科のドクター、そして「緩和ケアの外来は入院審査の外来だけで2ヶ月待ち、その後も入院まで外来通院はありません」という緩和ケア側、双方に問題がある。

「緩和ケアがふさわしい患者には専門的な緩和ケアを受けてもらうのがベスト」という一般科ドクターの言い分はよく分かる。肺の病気なら呼吸器科が診るべきだし、心臓なら循環器科が診るべき、なら、緩和ケアなら緩和ケア医が診るべきだろうし、患者さんにとってもそれが一番幸せなことだ、という理論だ。しかし、緩和ケアは、そもそも「肺の病気」や「心臓の病気」というような臓器別の診療科ではない。そうなると、どこからが緩和ケア科の専門領域と言えるのだろうか。抗がん剤をやらなくなったら緩和ケア科?痛みが出てきたら緩和ケア科?少なくとも、「当科での治療が無くなったから緩和ケア科でも行きなさい」というのは無しじゃないかなと。
 
 一方で、緩和ケア医の言い分。緩和ケア医は、臓器別専門医とその患者数に対して圧倒的に数が足りない。少なくとも、全ての「抗がん剤治療の適応のない」患者さんを受けてしまうと、マンパワー的にパンクするのは間違いない。なので、その外来にも何らかの制限を設けて質を保つ必要がある。しかし、かと言って、本当に緩和ケアが必要な患者さんに対して診療を制限するという姿勢はいかがなものか。そもそも、外来で診てもらいたい、という患者を医療者側で制限して、「診ません」「いずれ診ますよ、そうですね2ヶ月後に」なんて言える科はそうそうない。「いつでも、どこでも、受けたいときに」緩和ケアを受けられるように、というのは数年前の緩和学会総会のテーマだが、いつまでたっても患者さんにとって距離の遠い存在のままだ。早期からの緩和ケアなんて、どこにあるというのか。
 
当院も、昔はそうだった。患者さんの受け入れ制限をかなりしていたところがあった。
しかし、今年から、なるべく多くの患者さんを受け入れるよう、みんなで議論を進めている。
外来枠の工夫やがんサロンの活用なども含め、一応、全てのケースで漏れが無いように対応(必ずしも外来通院でフォローする、という意味ではないが)できそうである。複雑なパターンもあるが、それは相談員や医師で話し合った上で対応をお返事するようにしている。
ただ、そうするとどうしても一人一人にかけられる時間に制約があるため、十分なケアができない部分もある。批判もあるだろう。しかし、今ある痛みをコントロールするとか、通院するところを失って困っているとか、そういうニーズをまず満たす、ということがとりあえずは大切なことで、その選択肢がある、ということが必要なのだと思う。

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