JIM6月号「すべては地域医療に」を読んで

藤原靖士先生のツイッターの内容が面白いのでまとめてみる。
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JIM「すべては地域医療に」総論が刺激的だっただけに、読み進めるうちに失望と、希望が混在してきた。これが今の現状なのだろう。各論になると、総論とかけ離れた内容しかない。評価できるのはエディトリアルと総論。研修医に地域で医療を経験させるというのは入り口だが「地域医療」ではない。実際にそこから育った医師が、どう「地域医療を展開するか」という点までは全く触れられていない。高知県での取り組みも、静岡県島田市医師会の取り組みも、地域医療のごく一部しか捉えていない。「病院の世紀」の病院視線の地域医療。

「女性医師と地域医療」女性医師が僻地で勤務することの問題は重要な視点だが。「地域医療」=「僻地医療」でない。都市部でも女性医師がどうコミュニティと向き合い、地域医療を展開するか。主婦でもあり母でもある女性医師は、コミュニティとの関係が容易。

これからの医療が、単に医学の世界だけでなく、社会学・経済学・史学・人類学などの、日本では「文系」(私自身はこのような分け方には異論がある)の知見が医学医療の分野に応用されるのが、これからの時代だと思う。それが感じられたのは評価できる。非常に興奮した。。「地域医療」という学問分野は今になってやっと、理論のきっかけができただけで。その現状も手段も、まだまだ研究されていなくて。体系化なんて夢のまた夢。でも、これから、時代の要求がある分野ということ。とすればこれほどやりがいのある分野はない。自分が死ぬまでには解決する問題でない(20世紀初頭に細菌学やビタミン学や外科手術を学んだ人は、20世紀末に臓器移植まで可能な状態を生きて見ていない)けど、歴史の中での自分の位置づけが見えればやりがいのある仕事。という、現状への失望と今後への希望が混在。
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私も実際にJIM6月号を購入してみて読んでみた。
藤原先生と概ね同意見である。
総論はとても興味深く、鳥肌の立つような内容であり、また特集のテーマで若月先生の「医療はすべからく地域医療であるべきで、地域を抜きにした医療はありえない」という、先見性のある言葉を紹介し、都市部でも田舎でも「地域」を中心に医療を組み立てていく、という概念を紹介しているにもかかわらず、その他の内容の多くは「地方の医師不足」「(初期研修における)地域医療研修をどうマネジメントするか」などのテーマを取り上げており、「病院から地域へ」という大きなパラダイムシフトをどのように展開するか、という論考が少ないのが残念である。

私自身「病院から地域へ」という概念を、どのように若手に伝えていけばよいかは日々悩んでおり、往診などで患者さんの実際の生活を見てもらい、その後ディスカッションをすることで、病院で待っているだけの医療(病院の中だけで考える医療)から、自ら地域へ働きかけていく医療(地域全体を医療フィールドと考える医療)へのパラダイムシフトができないかと模索しているところではある。
自分の理想とするところは、更別村の、保健・行政・教育などが一体となった地域ケアの姿だが、同じ事を都市部で展開するのは障壁も多く、どのような形で少しでも都市における地域医療の発展に応用できるかが今後の課題である。
そういった部分を、特に都市部の「病院家庭医」とされる先生方がどのように考え、実際に活動しているのか、という点など、個人的にはとても興味のあるところである。

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