緩和施設不足問題

twitterにて「緩和施設不足の現状をどう解決すればいいと考えているか、意見を聞かせて欲しい」と言われたので、少し考えてみる。

緩和施設それ自体は、一時期の設立ラッシュは過ぎたものの、今後も少しずつは増えていくと思う。
ただ、そのスピードは患者さんの需要に全然追いつかないだろうし、何よりスタッフが足りない。
現在、全国のホスピスでは、一人医長として頑張っているところがかなりを占めるだろう。
今でもスタッフが足りない、というところにいくらハコモノだけ作ったとしても、質の低い緩和ケアが提供されるのが関の山だ。
前にも書いたように、若手緩和ケア医のキャリアパスは混乱しているし、どの研修方法を選んだとしても、一人前になるためには時間がかかる。
産婦人科や外科、小児科などが不足してる現状で、緩和医だけを増やすのにも限界があるだろう。

解決策は?
ひとつは、癌に関わる医師全てが緩和医療をできるようにする「peace project」だが、
一定の成果は挙げているものの、基本座学中心の土日の研修で、一体どれほどの技術が身についているか、甚だ疑問である。
緩和は、単に疼痛に対してモルヒネを投与するとか、患者さんと会話をしていれば言いわけではなく、
少なくとも緩和医の不足を補うほどの技術をつけるためには、数ヶ月単位の研修は必要である。

そこで、私が期待しているのは「家庭医」の先生方である。
家庭医の先生方に、月単位で緩和の研修に来て頂き、在宅ホスピスを推奨するということである。
もちろん、地域の後方支援病院は必須であるが、うまく協力すればお互いの心理的負担はかなり軽減できるように思う。
もうひとつは、特養や老健などでも癌の患者さんを受け入れることだ。
実際、安定している患者さんの場合、癌があったとしても病院に入院している必要はほとんどないことが多い。
緩和医もしくは緩和を学んだ家庭医が定期的に往診すれば良い。
そして、どちらの場合も、必要に応じてホスピスを利用する。

今は、在宅は家庭医、ホスピスは緩和医、老健施設などは癌はダメですよ、なんて言って、
お互いに融通が効かないから、ただでさえ少ない医療資源が流動しない。
患者さんのニーズに合わせて、家に帰りたければ在宅へ、家族の負担が心配なら特養へ、症状コントロールが集中的に必要ならホスピスへ、と使い分け、必要に応じて医師も各施設での対応をすべきではないか。
つまり「地域全てを病院と考える」ということである。
地域にある資源をひとまとめにして考え、各部署でできることをする、資源は流動的に用いる。
というのが、現時点で取りうる最大の方策か、と考えるがいかがだろうか。

是非、賛否および代替案など募集したい。

コメント

  1. こんにちは。
    当たり前の意見で申し訳ないですが、地域で緩和ケアの
    勉強会などを開き、病院の勤務医(一般の内科・外科医
    と緩和ケア医が顔を合わせられる機会も意外と少ないもの
    です)と家庭医、訪問看護師等が意見交換出来る場を作る事
    は非常に有意義だと思います。

    お互い何が出来て何が出来ないのか、出来ないなら
    何故出来ないのか、を話していくと何とかなる事も
    多いものだと思います。

    …恐らくその「会」を開くのが難しいのだと思いますが。

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  2. facebookの方でも同様の意見が出ていました。
    peace projectをstepにして、アドバンスドコースとしての定例勉強会を開く、というのは面白いかもしれません。
    「同じメンバー(増減あり)で、継続して集まる」というのが恐らくいいのだろうな、と。
    労力は大変ですが、今後検討したいと思っています。

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  3. コメントが書き込めていないようなので代わりに転記します(メールでのお知らせは届いているのですが)。
    念のため個人名は隠しました。

    >
    書いてくれと頼んでおいて返事もせずすいません。
    家庭医の緩和医療はいいですね。
    私も腫瘍内科医師でありますが週一回は診療所で働いています。そのなかで、逆に私たちもある程度は家庭医でなければならないと思っています。

    そこで最近思うのは専門性と地域差です。医院がコンビニのようにあれば生き残りのためにも専門性が必要ですし、まわりに医院が少なければ広い範囲で見れないといけないと思います。どう思います?

    僕らの世代ではできたら家庭医、緩和医、専門医、が協力出来るシステム作りたいですね。
    家庭医は当初とても魅力的ですが自分はがん医療が好きです。先生と私でも色々意見が違うとは思いますが家庭医好きの腫瘍内科医として頑張りましょう!
    家庭医ファンクラブに僕もいれてください。

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  4. で、お返事です。

    私の上記の意見は、都市部を想定して書いた意見です。周囲に医院が少なければ、自分たちも癌だけではなくある程度ジェネラルに診療することが求められるでしょう。
    中小病院では都心部でもある程度非専門の疾患も診なければなりませんが。

    是非、様々な職種が自然に協力し合えるシステムを作りたいですね。
    頑張りましょう!

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