緩和医として、つらいこと

これもちょっと前に書いた日記(一部改編)
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最近、うちの病院にも学生さんがよく見学に来るようになった。
マッチングが近いからだろう。
緩和病棟はうちのひとつのウリなので、病棟で一番学生に近い(歳が)私によく案内が回ってくる。

そういうときに、必ずといっていいほど聞かれる質問は
「患者さんが次々と亡くなっていくのって、辛くないですか」
というものだ。

これは、緩和医としては辛くない(人間としては、別)。
「自分たちの治療で患者さんの症状が取れて、家族と一緒に散歩に出たり、好きな音楽が楽しめるようになったり、うまくいけば旅行に行けたり…そういう楽しい時間を少しでも持つことができて、最後に皆が満足しながら旅立っていければ、それはつらいことではないよ」
と答えるようにしている。

だから、逆を言えば、つらいことは「受け持ちになってすぐに患者さんが急変すること」と「症状コントロールが上手くいかず、いい時間を過ごしてもらえなかったこと」。
癌患者さんはその疾患上、いつ急変してもおかしくないのは確かである。
でも、ようやく緩和病棟に入院して、さあこれから、というときに意識レベルが低下したり、肺炎を併発したりすると、本当につらい。
そのまま亡くなってしまったりすると、本当にただ「看取り」をしただけの人になってしまい、お互いに無念さが残ってしまう。

家族からも「何のためにここに来たのでしょうか」とか言われると本当につらい。

ある患者さんは、一般病棟で入院してきたが、入院翌朝に急変した。
「このまま旅立たせるわけにはいかない」と、師長に無理を言って急いで緩和病棟に上げてもらった。
幸い、ちょと持ち直して、今日一緒にきれいな夕日を見た。
といっても、窓の向こうは建物があり、患者さんのベッドからは夕日に染まる白壁を見るだけだったけど。
でも、入院してからはじめて見る、笑顔だった。

そういうのがないと、やっていられない。
でも、そういうのがあるから、やめられない。

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