2011年1月8日土曜日

緩和転院こじれるパターン

2年前、私がまだ化学療法を勉強する前に書いた日記。
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 緩和病棟には、日々色々な方から相談の電話があり、そのほとんどが「緩和ケア受けられますか」の相談ですが、それぞれ抱えている背景は異なり、その状況によって、すんなり初診予約に行き着くケースと、話がこじれるケースに分かれるようです。

すんなり予約に行きつくケースとしては、
・本人、ご家族が緩和ケア病棟に入院(もしくは緩和ケアを受けながらの通院、在宅治療)することを希望している。
・いわゆる積極的治療は全て終了して、心のきりかえもできている。
・予後が比較的長くはない。
・自宅(もしくは親族の家)が病院の地域内。

逆に、話がこじれるケースとしては、
・まだ治療を諦めていないが、症状緩和は行ってほしい。
・「緩和医療とは何か」についての説明も受けずに、主治医から「緩和に行きなさい」と言われたので、とりあえず電話してみた。
・すでにいくつかの病院に入院予約が入っている。

などでしょうか。

しかし、「まだ治療を諦めていないが、症状緩和は行ってほしい」という相談については、何か手を打てないものか、とよく考えています。
自分の院内で治療を行い、緩和が併診する、というのは現在も行っており、特に問題ないのですが、
「治療は○○病院で受けたい、でも緩和は地元の病院で受けて、いざとなったら入院もしたい」
とか
「ホスピスに入院しながら、免疫クリニックに通院したい」
とかのご要望は中々難しいものがあります。主な問題としては、
・治療と緩和で施設が分かれると、連携が取りにくく、仮に治療が原因で患者に苦痛が出ても治療の内容についてのディスカッションがしにくい。結果、患者のマネジメントをするのが非常に大変になる(治療のしりぬぐい?)。
・緩和医療だけを希望された病棟待ちの方が他にも大勢いるのに、治療も行っている方を入院させるのはおかしい、という意見が出る
というところです。

しかし、個人的には、癌になって「もう治療はいいです」とそう簡単に割り切れるものなのかなぁ、と甚だ疑問です。
むしろ、治療は諦めてないけど、とりあえずこの苦しみを何とかしてほしい、というほうが多数派なんじゃないかな、と思うのですが。

実際、私の受け持ちの方にもそのような方がいます。
ひとりは、辛い化学治療から逃げ出してきて、緩和を受けに来たが、できる治療があればまた受けたい、という方。
もうひとりは、「手の施しようがない」という理由でこちらに送られてきた方。
お二人とも、治療を希望されていたので、私はそれぞれに適した院外の施設を紹介し、そこで治療に通ってもらいながら緩和治療は院内で行っていくようにしました。
確かに、連携が取りにくく大変な部分もありますが、お二人とも特に大きな副作用もなく、現状に満足しているようです。

現在のホスピスは患者を制限しすぎと思います。
治療は諦めないとダメ、という診療システムになっており、医療者側もその哲学に洗脳されているのではないでしょうか。
以前、肺癌の末期でホスピスに入院した方に、苦痛軽減目的でイレッサを投与したところ、ほぼ完全寛解となり退院となった方の症例を同僚医師が学会で報告しましたが、
「そんなことはホスピスでやるべきことではない」
「そんな治療ではホスピスが赤字になる」
とのありがたいお言葉を頂いたこともあります。
ホスピスの哲学の前では、患者は癌で静かに死んでいく方がよかったとでもいうのでしょうか。

緩和的化学療法という概念を、もっと発展させていかないと、治療医から捨てられ、緩和で受け入れられず、という人がどんどん増えていくように思ってしまいます。

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